あげそげコラム

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コラム掲載号:20171020

遊び心を競う―多能趣味人の納め札

  • 「東都肉筆納札交換会」板祐生作品
    「東都肉筆納札交換会」板祐生作品
  • 「東都肉筆納札交換会」板祐生作品
    「東都肉筆納札交換会」板祐生作品
  • 「東都肉筆納札交換会」板祐生作品
    「東都肉筆納札交換会」板祐生作品

 納め札とは、巡礼者が霊場に参拝したしるしに納める氏名などを記した札のことです。

 江戸時代後期には千社参りがさかんになり、千社札として納札が行われました。

 納め札はその後しだいに趣味的流行となり、種々意匠をこらしたものを木版刷りとして、同好会の間で交換の会が開かれるようになりました。大正時代の自由を尊重する気風は納め札にも影響を与え、木版から肉筆で行う気運が起こりました。1924年(大正13)4月、我楽他宗の仲間は「東都肉筆納札交換会」を結成しました。祐生は会誌を担当し、「江戸紫」として8号まで発刊しました。残念ながら当館には4冊しか所蔵していませんが、納め札の記録としては極めて稀なものとなっています。祐生はこの後発会する大坂の「白鈴会」「三筋会」にも参加しました。祐生日記によりますと納め札は1928年(昭和3)には激減しているので、東都肉筆納札交換会は昭和2年まで続いたと思われます。代わりに登場するのが暑中見舞の交換会です。

 肉筆納札会に参集した人たちは、一般の人から見ますと、「遊び心を競う」という誠にうららやましい環境と才能を持ち合わせた人たちでした。今回、展示した約860点の納め札からは、祐生の交流した多能趣味人の描写力や納め札にかける遊び心の情熱が伝わってきます。まさに「笑われぬように笑って遊びたい」人たちの本領発揮の場でした。

 経済的には恵まれない立場の祐生にとっては、自らの実力を遺憾なく振るうことのできる唯一の場であったと思われます。

何かとゆとりのない世相のなかで、多能趣味の人たちの作品から、心温まるひと時を過ごしてみませんか。

 

(祐生出会いの館 猪原加代子)

 

【開催期間】9月30日(土)~11月27日(月)
【開館時間】9時~17時
【休館日】火曜日
【入館料】一般:300円 高校・大学生:200円
【問い合わせ】

遊び心を競う―多能趣味人の納め札

南部町祐生出会いの館

TEL/FAX 0859-66-4755

 

 

 

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