あげそげコラム

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コラム掲載号:20220408

森田尾山さん『書展』を開く

 森田尾山さんは「ガイナーレ鳥取」をはじめ、求めに応じて気さくに書を揮毫し、世の人を鼓舞するが、肩ひじ張らない謙虚な書家だ。

 今回、高島屋美術サロン(4階)での『書展』は額縁(おちらと庵佐伯勉さん作)に合わせて、数多くの出会いの中で心に沁みた言葉や今まで寄せられた感謝のフレーズを書くという、挑戦ではあるが本人にとっても作って楽しい展示会で、出展三十五作品の中には「挑戦」も「楽しい」も作品化したという。

 

 

森田尾山書展 四月十三日(水)~十八日(月)10:00~美術サロンは18:00まで。無料。

 伯耆書院(尾山さん主宰の書道団体)は2010年代半ばから5年間、伯耆の文学をテーマに毎年書展を開いてきた。その間に見てきた自然豊かで風光明媚な伯耆地方に点在している文学碑はおよそ300基、これらのうち、特に短歌、俳句などの分野の普及向上に努めた作家の一〇六基に絞ってまとめ、『西伯耆の石ぶみを訪ねて』(アート紙A5版百二十三ページ)という本にして出版した。初版はあっという間に売り切れ重版が刷られた。

 また、尾山さんは金子みすゞに感動し、十五年ほどかけて、みすゞの詩約70点を書の作品として書き溜め、うち40点を書展「金子みすゞに憑(つ)かれて」で公開する一方、著書『森田尾山書作品集・金子みすゞに憑かれて』を出版した。そしてこれをカレンダー『金子みすゞの世界』として制作している。

 森田尾山さんがみすゞの詩にひかれたのは「ばらの根」という詩。「はじめてさいたばらは、あかい大きなばらだ。土のなかで根が思う『うれしいな、うれしいな』」バラの花にはみんなの眼が集まるが、その花は見えないけれど根があってことなのだ、根も喜んでいるに違いないと謳う。

 また、誰もが知っている「大漁」の詩は、おおばイワシの大漁に浜はお祭り騒ぎだが、海の中ではイワシの家族が何万のとむらいをするだろうと思いやるのだ。尾山さんはみすゞの「見えないものを感じ取り、ものを見る深さ」に感動し、「相手の思いを探り、相手の深い思いに気づくことができる詩」にすっかり憑(と)りつかれた。

 展示会場では前記二冊の書籍とカレンダーも披露し、即売する予定だ。尾山さんの書で読む作品はひと味違うだろう。問合わせ0859-22-1111

   (河中信孝)

 

 

 

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