あげそげコラム

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コラム掲載号:20200522

コロナ対策に森で樹木とハグを

 世界的なコロナ禍のなか、コロナウイルスに抗して免疫力を高めようと、アイスランドの森林管理局が「樹木と抱き合おう」と呼びかけたという。国土の0・5%しか森林がない国ならではの提案だ。  コロナでストレスが溜まり、気持ちも沈んでくる。そこで「樹木とハグしてストレスを解消しよう」という策である。

 

森林療法にも注目

 

 日本でも東京農業大学の上原巌教授は「森林療法」を二十年間も研究している。

 まず森の中を歩くことに始まり、フィトンチッドを思い切り吸い、歩かずに止まってもよいし、腰かけてもいい。また、体操や瞑想、ヨガなどのメニューもあるし、「森の中で自分がもっとも気になる木を選び、自分の木」を選ぶという作業もある。おすすめはアイスランドで推奨されたように樹木とハグをすること。3蜜を避けて家族くらいの単位でやってみてはどうだろう。

 また、森とのかかわりを重視した「森林セラピー」で町おこしをしている所もある。認知症を患っていた男性が森で鋸や鉈を使って作業したら、驚くほど回復を遂げたという。

 この療法は、科学的な考証も行われており、森に入る前と後で血圧や脳波を測定し、ストレスホルモンの量を検査して、有為な差が出ることを証明している。また免疫細胞NK細胞が増えたという報告もある。

 

 

森と住まいの関係

 

 オーストラリアの都市部に住む約4万七千人の男女を6年間追跡した研究から、樹木が多い地域に住んでいる人は、そうでない人に比べて幸福感が強く、健康状態も良好であることが明らかになった。葉の茂った樹木に覆われ、日陰が多い地域に住む人では、追跡期間中に心理的苦痛を経験したとする報告が少なく、全般的な健康状態も良好だった。先年「JAMA Network Open」オンライン版に発表された。森と人との関係は想像以上に深いものがある。

 一般に近しい親族や好みの異性とハグすれば免疫力が増進すると考えられているが、生後4か月から1歳までの乳児では両親にハグされると心拍間隔が長くなり、副交感神経が亢進して、リラックスしていることが研究の結果として報告されている。

 

(河中信孝)

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