あげそげコラム

一覧はこちら

コラム掲載号:20200320

羽田空港新着陸ルートに疑問

 国土交通省は今月二十九日から運用する「羽田航空への着陸ルート」を新しく東京都心の真上、新宿上空から品川の上そして羽田へーのコースで運用するとしているが、その進入角度が問題化している。

 東京五輪で増便が予想される羽田空港だが、羽田を含め世界の国際空港は着陸時の降下角度は3・0度だ。ところが、去年7月になって国交省は新ルートの角度を3・45度に引き上げると表明した。わずか0・45度の違いと言うなかれ、これは操縦士にとって急降下となり着陸の難易度が格段に上がる。だが、公式の議論がないまま昨年末に公示された。

 

 

 世界のパイロット10万人が加わる操縦士協会連合会(IFALPA)は今年1月「ハードランディングにつながりかねない」と懸念を表明、今年2月の試験飛行でも問題が生じた。  その後国交省は新宿上空から4度に近い角度で急降下し羽田の近くで3度の角度に戻すという便法を認めたが、これで問題が解消したことにはならない。

 日刊ゲンダイの杉江弘(元JAL機長・航空評論家)への取材では「まず急な降下角は減速しにくい。特に大型機は…なかなか減速できません。エネルギーが強すぎて滑走路に車輪が着いた際、機体がバウンドする恐れがあります。(あとは)各自の経験任せ。着陸をやり直すか、そのまま着陸を試みるか、その際、懸念されるのが尻もち事故です。…ホンの少し機首を上げるタイミングを誤ると、尾部をこすってしまう。」尻もち事故の死亡事故は数多いという。

 IFALPAは着陸操作中に、対地接近警報装置(GPWS)が大音量で「降下率大きすぎ」の警告が鳴らす可能性を指摘している。なれないパイロットにパニックが起こさねば幸いだ。今回は降下角に絞ったが、二つのコースが近距離でほぼ並行して設定されておりニアミスの恐れも指摘されている。私たちもよく利用する空港だけに安全を確保してほしい。

 

(河中信孝)

↑ページ上部へ