あげそげコラム

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コラム掲載号:20181123

民衆の願いを描く―大正の絵馬展

  • 禁酒・断酒を誓う大正時代の絵馬(東京都)
    禁酒・断酒を誓う大正時代の絵馬(東京都)

 緑水湖畔にある祐生出会いの館では、大正時代の絵馬展を開催しています。
絵馬の起源は、古代の神事で生きた馬を献上した風習に始まります。奈良時代には板に描かれた馬の絵が残されています。室町時代なると専門絵師による大型の絵馬が作られ絵馬堂に掲げられました。一方、小型の絵馬は民間信仰的な要素をもって主流となり、現世に利益を求める個人の祈願が多くなりました。江戸時代には、民衆の機知に富んださまざまな図柄の絵馬が奉納されました。画題としては、馬の絵のほか、神仏像、祈願の内容、祈願者の姿、干支など表現はさまざまです。神仏への願いが絵柄で表現され、重ね餅は夫婦円満、狐は五穀豊穣・商売繁盛、タコは腫れ物平癒、煙管に錠は禁煙等の意味がこめられていました。

 

 祐生が絵馬について知るのは、大正6年大阪朝日新聞に掲載された絵馬収集家小山源治氏についての記事でした。祐生は小山氏から絵馬について情報を得、東京や群馬の絵馬屋から絵馬を購入したり、直接社寺に絵馬の恵贈を願ったりしました。大正8年全国的な趣味グループ「我楽他宗(がらくたしゅう)」に入会すると、会員からも届くようになりました。さらに肉筆で制作した納め札の交換会である「東都肉筆納札会」においても絵馬が題材とされお互いに交換されました。

 本展では、祐生が大正7・8年の二年間で収集した絵馬を始め、我楽他宗・東都肉筆納札会の絵馬作品等360点を展示しています。現代においてなお絵馬の奉納は、広く行われていますが、百年前の絵馬から民衆の神仏に寄せる心情に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

(祐生出会いの館 野口玲子)

 

【開催期間】平成30年11月26日(月)まで
【開館時間】9時~17時
【休館日】毎週火曜日
【入館料】

一般:300円

高校・大学生:200円(15名以上の団体割引あり)

※身障者手帳所持者と介護者1名無料

 【問い合わせ】

南部町祐生出会いの館 西伯郡南部町下中谷1008

TEL/FAX 0859(66)4755

民衆の願いを描く―大正の絵馬展

 

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