祐生の拓本収集は、1917年(大正6)、大阪朝日新聞のコラム「珍道楽」に掲載された風変わりな収集家30人に収集の趣旨を問い合わせたところから始まります。すぐに古代史研究、骨董収集などの趣味人から、古瓦、刀鍔などの拓本が届きました。1919年(大正8)「我楽他宗(がらくたしゅう)」への入会によって拓本についての知識が備わり、石碑、古銭、古鏡などへと関心が広がっていきました。
また、中国・朝鮮半島に渡った人に拓本収集を依頼し、「西安碑林」(中国)、「慶州石仏」(韓国)をはじめ多くの拓本がもたらされました。一方、祐生自身も「了春寺」(米子市)、「経久寺」・「保寧堂」(南部町)などで拓本をとり、全国の趣味人との交換品としていたと思われます。その人たちの間では、後醍醐天皇行在所であった「船上山碑」(琴浦町)、大山寺から援軍として船上山に参陣した名和長年の弟「信濃坊源盛碑」(大山寺)の拓本に人気がありました。
遺された拓本の中には、東大寺大仏殿正面にある破損する前の国宝「金銅八角灯籠火袋羽目板音声菩薩」や、国宝「東大寺大仏台座蓮弁」の拓本、「平城宮古瓦」、三徳山三佛寺重要文化財「文殊堂内陣金具」の拓本、10世紀から12世紀に遼(中国)で使われた「契丹文字」の拓本など、貴重なものが少なくありません。
なお、祐生の拓本収集は、1938年(昭和13)に死去した愛娘暎子の追善供養のために購入した観音拓本を最後に終了しました。
本展では、祐生コレクションから拓本446点を展示しました。拓本の美とともに、歴史資料としてもお楽しみください。
(祐生出会いの館 野口玲子)
【開催期間】 | 平成30年2月12日(月)まで |
【開館時間】 | 9時~17時 |
【休館日】 | 火曜日、年末年始(12/29~1/4) |
【入館料】 | 一般300円、高校・大学生200円 |
【問い合わせ】 | 南部町祐生出会いの館 TEL/FAX 0859-66-4755 |